月別アーカイブ: 2014年9月

西アフリカから帰国後の癲癇発作と高CK血症

少し備忘録ついでに症例検討会のメモを残しておきます。

40歳男性、Black / African

【Sample】
Subject:高CK血症、食欲不振、筋肉痛(全身)
Allergy:既知のものなし
Medicine:デパケンR→今回のイベントまで怠薬していた
Past History:癲癇→20歳で指摘、今まで3回発作あり
Last meal:朝食、いつもより少ない
Event:
2日前に癲癇発作を起こし搬送。それまでは元気だった。発作は5分ほどでおさまっており、来院時の意識は清明。上記の通りデパケンの怠薬があったため、それによる癲癇発作と考えた。血液検査でCK 9000と高値を認め、横紋筋融解症を懸念され、外来で輸液されていた。血液検査でCK 11000とリバウンドを認めcallあり。

【Vital signs】
Level Clear、全身状態は問題なし
体温 36.7度、他vital signsは記載なし

【Physical signs】
顔面:眼球結膜黄染なし、咽頭所見なし
頸部:リンパ節腫脹なし
胸部:呼吸音清、心音清
腹部:平坦軟、圧痛なし
四肢末梢:温、CRT<2sec
体表:皮疹なし

【血液検査】
血算:正常(血http://pedsurgery.wp.xdomain.jp/wp-admin/post-new.php#小板減少なし)
生化学:CK 11000、AST/ALT 80/80、LDH 600、T.Bil 0.8、CRP陰性、BUN/Cre 正常、電解質正常
尿検査:色調正常、潜血陰性
_______________________________

さて
#.どうしてCK値がリバウンドしたのか?
#.今回の発作は本当に癲癇で良いのか?
が気になりました。それでよくよく話を聞いてみると。

渡航歴:西アフリカに3ヶ月間、帰郷していた。実家で過ごしており現地人と同じ様に過ごしていた。蚊の対策はきちんとしており、蚊帳の中で寝ていたがマラリアの予防内服はせず。淡水への接触はなし。エボラ出血熱の流行はなかったと。

癲癇発作:いつもは2分くらいだった発作が5分くらい続いたと。発作後筋肉痛などが出現することはあるが、今回は酷く、2日経ってもまだ残っている(少しずつ良くはなってきているが)発作前後に熱中症を疑う様なエピソードはなしと。

ということでした。高CK血症の鑑別や、輸入感染症の鑑別、横紋筋融解症ってよく聞くけど実際どうなの?など、色々と曖昧な知識を整理することが必要な症例でした。少し勉強してみます。

【Clinical Questions】
#.輸入感染症の鑑別方法
#.横紋筋融解症とは?
#.マラリアの予防内服は?
#.癲癇後の高CK血症のnatural history

肝硬変の患者におけるヒトの腸内細菌叢の変化 Nature

Nature. 2014 Sep 4;513(7516):59-64. doi: 10.1038/nature13568. Epub 2014 Jul 23.

Alterations of the human gut microbiome in liver cirrhosis.

Introduction
肝硬変は重篤な肝疾患で、急性肝障害もしくは慢性肝障害の結果起こり、原因はアルコールや肥満、肝炎ウイルスなど様々である。非代償性の肝硬変へと進行した患者の予後は不良であり、肝移植の適応となることも多い。肝臓は腸管と胆汁酸や門脈を介して密接に関係しており、過去の報告で腸管内の細菌やその代謝物が腸管粘膜のバリアを超えて肝臓へtranslocationすることが、肝硬変の進行に重要であることが判明している。

腸内細菌の組成が肝硬変の患者の腸内でどう変化するかはまだよく分かってはいない。ある報告では、腸内細菌叢の変化は肝性脳症や原発性腹膜炎といった肝硬変の終末期の合併症に関係しているとされており、またある報告では、アルコール性肝障害や非アルコール性肝障害といったearly stageの肝疾患において、その後、肝硬変にまで進行するかどうかに腸内細菌が関係しているとされている。しかし、ヒトにおける腸内細菌叢と肝組織の明確な関連性はまだ明らかにはなっていないため、123人の肝硬変群と114人の対照群の漢民族における腸内細菌の解析を行った。

Results
Fig.1
・腸内細菌叢の遺伝子量は肝硬変群(LC)で健常コントロール群(HC)に比べて優位に少なくなる
・LCでは12種のBacteroidetetesと7種のFirmicutesが減少する
・逆に4種のstreptococcus、6種のveillonellaが増加しており、これらは口腔内常在菌である

Fig.2
・LCとHCの腸内細菌の遺伝子を比較して、LC群に特有の遺伝子クラスターを28種、HCに特有の遺伝子クラスターを38種同定し、Metagenome species(MGS:メタゲノム種)として設定した
・LCにおいてLC特有のメタゲノム種が多い群では少ない群に比べて、優位にMELD score、Child Pugh score、T.bil、PTの値が悪かった
・LC群で減少している、Coprococcus comes、Ruminococcaceae、Lachnospiraceaeは酪酸産生を介して腸管免疫に寄与している
・LC群で減少しているfaeclibacterium prausnitziiも抗炎症効果があるとされている
・(Extended data) LCで減少している遺伝子の機能を調べると、膜トランスポーターや代謝経路にかかわる酵素などの機能が低下していることがわかった
・(Extended data) このことがNH3やGABA、マンガンの代謝と関連し、肝性脳症の原因になっている可能性がある

Fig.3
・網羅的に解析した腸内細菌の遺伝子から特徴選択のアルゴリズムを用いて15種の遺伝子を同定しバイオマーカーとして使用することを想定
・これのありなしでROC曲線を書くと、AUCは83.6-91.8%と診断的価値高い
・PDI(本文参照)というスコアを用いると、LCとHCで有意差が認められ、肝硬変の診断や病勢判定に用いることができる

Comment
今度は肝硬変のメタゲノム解析の結果が出ました。肝硬変では口腔内常在菌の割合が有意に増えることが示されています。原発性腹膜炎の起炎菌は口腔内常在菌で1st choiceはSBT/ABPCです。この理由がよくわかりました。また腸内細菌とNH3/GABAなどが関連しており、肝性脳症との関連も示唆されています。非常に面白い論文でした。しかしFig3のバイオマーカーの下りは不必要ですね。今の時点で簡便なclinical scoreがあるので、金もかかる遺伝子の検査をわざわざしなくてもと思ってしまいます。

小児のAFP

小児肝腫瘍を鑑別する際は、年齢と腫瘍マーカーが大事な因子になってくると思います。再度確認する必要があったので簡単にですがまとめておきます。

Pediatric Surgery 7th edition / Coran

・腫瘍マーカー:AFP、βhCG、フェリチン、CEA、VMA、HVA
・肝炎ウイルスマーカー:HAV、HBV、HCV、EBV
・AFPは90%の肝芽腫、50%の小児HCCで上昇する

・AFPの上昇は必ずしも悪性腫瘍を示唆しない
・AFP<100の肝芽腫は予後不良因子である
・一方、高分化型、胎児型などのfavorable histrogyではAFP上昇しないこともある

・新生児の肝臓はAFPを産生しているため、高値が正常
・最初の数ヶ月で値は低下し、少なくとも1歳までには成人の上限である10ng/ml以下になっている
・新生児期の肝外傷の回復期でも高値を示す
・乳児期の血管腫や間葉性過誤腫と言った良性腫瘍でもAFPは上昇することがある

小児急性膵炎の死亡予測因子 PSI

Pediatric Surgery International
September 2014
Date: 13 Sep 2014
Predictors for mortality following acute pancreatitis in children
Qiang Guo, Mao Li, Yang Chen, Hankui Hu, Weiming Hu

Introduction
・小児の急性膵炎の死亡リスクの報告は今まで為されていなかった

Patients and methods
・対象年齢:0-18歳
・West China Hospitalに急性膵炎で入院した児
・2002年-2012年
。小児における死亡の独立因子を多変量ロジスティック回帰分析で解析

Results
・小児急性膵炎の原因:胆道疾患23%、薬剤20%、特発性19%、外傷10%
・死亡率5%
・平均入院期間13日
・入院中の臓器不全は371人中24人に起こり、24人中19人が入院3日で発症した
・以下、死亡リスク
・1週間以内のSIRSの発生:OR = 2.12, 95 % CI 1.14–6.32, P < 0.001
・3日以内の臓器不全の発症:OR = 8.0, 95 % CI 2.2–12.3, P < 0.001
・1週間以内の多臓器不全の発症:OR = 9.4, 95 % CI 2.3–14.6, P < 0.001
・感染性壊死:OR = 1.28, 95 % CI 1.08–1.52, P = 0.02
・特発性の発症:OR = 17.3, 95 % CI 2.0–60.5, P < 0.001

Conclusion
・小児の致死率と合併症率は低い
・SIRS、早期臓器不全、MOF、感染性壊死、特発性は死亡リスクを上げる

Comment
当たり前と言えば当たり前ですが、特発性が予後悪いというのは勉強になりました。

胆道閉鎖症・葛西術後のステロイド投与 Int J Surg.

Postoperative steroids after Kasai portoenterostomy for biliary atresia: A systematic review.

Int J Surg. 2014 Sep 12;
Authors: Zhang D, Yang HY, Jia J, Zhao G, Yue M, Wang JX

Aim
・このsystematic reviewとmeta-analysisの目的は、葛西術後のステロイド投与が減黄、胆管炎、生存率に寄与しているかどうかを明らかにすることである

Methods
・BA、Portenterostomy、ステロイド、グルココルチコイド、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾンという語を使って論文を検索
・Primary outcome:減黄率
・Secondary outcome:胆管炎発症率、生存率

Results
・10個のsystematic reviewと8個のmetaanalysisが該当
・ステロイド投与法はそれぞれのstudyで一貫性なし
・減黄率:有意差なし(1.95; 95% confidence interval [CI]: 0.91-4.11; P = 0.087)
・胆管炎発症率:有意差なし(0.75; 95% CI: 0.48-1.17; P = 0.202)
・自己肝生存:ステロイド→30 ( 56% )、非ステロイド→ 31 ( 48% )
・生存率はmetaanalysisのデータに適していなかった

Conclusion
・ 葛西術後のステロイド投与は減黄率、胆管炎発症率を改善させないかもしれないが、利用可能なevidenceは限られており、確実ではない
・今後の更なる検討を

Comment
Abstractではちょっと何とも言えない論文ですが、結果はステロイドの有効性を否定するものです。ステロイドの投与法のばらつきがどのくらいかが気になるところ。今までの報告もきちんと読んで解釈しなければいけませんな。